Release day

ボジョレー・ヌーボー解禁日の夜、木曜日とあっては然程酒は進むまい…かと思えばしこたま呑む方々はそれなりの口実を得て心行くまで堪能したようだ。
終電近くの列車が新宿にさしかかると、ワインボトルを抱えた男が一人、隣に座った。終電間際に相応しく、結構酒が回っているようだ。座るなり直ぐに微睡み始めた。
その男、よく見ると抱えたボトルに栓がない。ボトルが何かの袋に入っているわけでもなく、ワインが周囲に散布されるのは時間の問題のように見えた。


ケータイで記事の整理をしつつ隣を窺うと、件の男の眠りはボトルの傾き共々深くなっている。ボトルの傾き加減が危うくなってきたところで両隣から何度か起こしてみたが、数分もしない内に男の眠りとボトルの傾きは元に戻り出した。
幸か不幸か、私の下車までの間ボトルは中身共々おとなしくしていた。その後の男とボトルの行方は不明だ。
今夜は心なしか横たわる乗客が多いようだ。