其れも聖域に非ず

放っておいても髪は伸びる。適宜手入れが必要となるが、昨今にあっては野郎の散髪も随分選択肢が増えてきた様子。美容院、理髪店、1000円カットとピンからキリまで。
美容院といってもピンからキリまであるようだが、街頭でばらまかれているチラシの類を見る限り、カット、シャンプー等々普通にいっても5000位は飛ぶ様子。染めたりすると諭吉さんまたはカードの出番。
あそこは髪の存在自体を嗜む方々の場所だ。消防カットまたはスポーツ刈りを基本形とする私には縁遠い…が、昨今は若い方々の選択肢上位によく上るというから驚き。


普通の理髪店は、例外もあるが大半は協定により4000円程度が基本料金となる。個人経営の所が多いのか、ピンからキリまであり、1回試してみないことには何ともいえぬ。私の場合、頭蓋骨の形状と太めの髪質で結構扱いにくいのか、半分の率で鋏やバリカンが頭に引っかかった。いずれも幸いにして傷には至らなかったが。
1000円カットが広まってきたことにより、あまり流行らないのか都内であっても客が入っているところを見たことがない店も若干ある。
ここ数年来続々と登場している1000円カットも何カ所か試したが、どの店も後始末は掃除機で済ませており、帰ったらすぐシャンプー推奨という点は共通している。着替えの際に髪のかけらが服に引っかかることはざらで、軽く頭をたたくと、掃除機では吸い取れなかったカスが落ちてくることも。泣いても笑っても1000円である。が、昨今の時流に乗って美容院と1000円カットの2極化が進んでいるのかこちらは待ち時間が長くなることを示す赤ランプが点灯しっぱなしの様子だ。
間をとって1500円の店があるのを見つけ、試してみたこともある。顔剃りとシャンプー付き、ということでどれほどのものかと思えば、剃刀がはいったのは額の一部と首、髭のみ。普通の理髪店では眉や耳まわりまで剃刀が入るが、この類の店ではほぼ安全、と思われる場所しかカミソリは入れない様子だ。
最低限やるとなると、これくらいはかかるだろうか、というレベルである。
たかが1000円とはいっても放っておいても髪は伸びる。こればっかりは必要最低限かかってしまうからやむを得ない…となるほど私は諦めがよくない。髪型にもよるが、その気になれば自前という選択も可能だろう。一番楽なのはバリカンでの丸刈りだが髪が伸びる内は中途半端に伸びると手入れが面倒となるということで、一時期深夜の通販番組でよく登場していた「掃除機の先に連結するタイプ」のバリカンを買ってみた。これならば丸刈り以外の髪型もある程度はできる。
等のバリカンは当てるだけで長さが調節できるよう髪の吸い込み具合を調節できるパイプがついてはいるものの、部分的に鏡を見つつ後ろはほぼ手探りとなる。もろに勘と経験の世界となるが、慣れればスポーツ刈りに近いところまではできた。
…しかし刃が無事でも本体はプラスチックの悲しい性か、5年程使ったところでプラスチック部品の劣化が始まり所々本体の一部が欠けるようになってきた。十二分に元はとったものの、数年持てばいいところだったようだ。代替え品を探したが、移ろいの激しい海外の通販製品の性なのか、昨今ではあまり見かけなくなってしまった。それほど需要がないのか、国内製品で同等のものは見かけずじまいである。
次に同じものを買ったとしても、1000円カットが流行る昨今にあっては元を取るのは容易ではなさそげだ。
そこで現在は、ある程度髪が伸びてきたところで風呂に入る前に梳き鋏を適当に入れて髪のボリュームを落とす戦法を取っている。これは高校時代に通っていた理髪店で教えてもらった方法だが、梳き鋏の特性上髪のボリュームが減るだけなので髪型作りに失敗することがない。加えて髭剃り用の剃刀や女性の眉剃り用剃刀を使って顔面や眉周りもある程度仕上げてしまっており、実績として散髪に出かける回数が年一回程度にまで減らせている。
が、そこは自前なので仕上げは雑になりやすい。少なくとも年に一回くらいは普通の理髪店できっちり剃ってもらった方が無難といえば無難だろうか。