Fishhook

何事もないはずの週末、実家からクール便が届く。
蟹を発送したという話は前日までに実家から電話があったが、届いた発泡スチロールの箱の大きさに目を疑う。蟹+保冷剤にしてはやたらと重く、大きい。空けてみた瞬間、皿に目を疑う。送り先を間違えたのではないかと思わせるには十分な量だ。蟹と刺身の昆布締めに始まり、鰈に鰤が一匹づつ、烏賊が二杯、鱈の切り身が一パック。お仕事の出張を翌日に控えていることもあり、そのまま放置、という選択肢はない。冷凍庫には魚が入る隙間がない。


早速調理、とはいうものの、これまでに扱ったことがあるのは生憎鰯レベルの小魚くらい。刺身を朔で買ってきたことはあったが、三枚おろしは未知の領域。
夜八時あたりから、ホットワインを飲みつつまな板に向かうが、鮮度がよいのと力加減がわからないのとで、よく研いだはずの包丁が鰤に弾かれる多難なスタートではあったが、
鰤は塩焼きに、蟹はキッチン鋏で身をほぐしてカニ飯+つまみ食いに、鰈は煮付けのつもりが照り焼きに化けた。鱈はそのまま鱈汁となり、烏賊はわたを外して昆布締め共々冷凍保存。所要時間は三時間を超え、料理にありつけたのは日付が変わる少し前…普段使わない筋肉を使ったのか、早速背中と腕に筋肉痛が走る。
週末の食事はお魚三昧となり、「おさかな天国」ならぬ「おさかな地獄」となった。
一夜明けた昼食の折り、鱈汁の鱈の頭から身を外そうとしたところ一晩寝かせて柔らかくなった頭がほぐれだし、骨の中から釣り針が現れた。後にも先にも、こういう代物にお目にかかったのは初めてである。
釣り針を飲み込んでしまうあたり、随分と活きのいい奴だったようだ。
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