1xEVDOとHSDPA

1xEVDOというのは、現行のcdmaOneシステムに少々設備を追加するだけで使えるようになる高速データ通信システムのことである。現行のcdmaOneと同じ周波数帯域幅(1.25MHz)で受信速度が 600kbps前後は確保できようになると言われており、データ通信に限って言えば1xやcdmaOneとは文字通りの桁違いとなる。。ちなみに最大受信速度は2.4Mbpsとされている。また、W-CDMA(FOMAなど)では5MHzの帯域幅を使っても384kbpsで、その拡張版ともいえるHSDPAは仕様上14.4Mbps(受信のみ)。


【1xEVDOでのデータ通信原則】
W-CDMAよりも狭い帯域幅で高速伝送ができるのは、データ送信の方法に「ちょっとした工夫」をしているためである。HDRではデータ伝送にあたり次のような原則を設けている。
* 通信品質に応じて回線の太さを変える
* データは送りやすいところから優先的に送る
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やっていることとしてはEVRCの応用といったとこかな?まず「通信品質に応じて回線の太さを変える」方法はおおまかには次のようになっている
1. 基地局ではセル内にあるすべての端末へ、一定時間毎に「パイロット信号」を送信
2. 端末は、「パイロット信号」の受信状況から自分の置かれている電波状況を判断
3. 端末から基地局へ状況報告
4. 報告を元にして、基地局でビットレート(注)を変化させる。
* 通信品質がよい場合は大量のデータを送信できるようにする
* 通信品質が悪い場合はビットレートを絞って、信号の誤り耐性を高める
(注)ビットレート→「スペクトル拡散」参照
通信品質がよい場合ビットレートを上げるのだが、そうすると拡散率(スペクトル拡散参照)が下がり信号の誤り耐性が少々弱くなる。しかし元々ノイズが少なく、たいていはコヒーレント帯域幅(スペクトル拡散参照)も広いので問題は少ない。また、ビットレート調節の他に変調方式を変えることも行っている。
通常、移動体通信でよく使っている変調方式はQPSKだが、通信条件によっては、「8-PSK」「16-QAM」といった、QPSKよりも誤り耐性が弱くなる代わりにQPSK以上の速度を出せる変調方式に切り替えることもある。
「データは送りやすいところから優先的に送る」点についてだが、これも回線の太さの設定と同じ要領でデータ送信の優先度を設定している。つまり、通信品質のよいところを優先して送信している。
こうすると通信品質の遅い端末にはいつまでたってもデータが届かないのでは?と思う人もいるかもしれないが、通信品質のよい端末には太い回線を用意して短時間でデータを送ってしまうので、余った時間を使ってじっくりとデータを送ることができる。また、実際の通信システムではユーザー毎のリソース割り当て(スケジューリング)に工夫をこらし、できるだけ公平かつ効率よくなるようにチューニングが施されているとか。
また、データは細切れのパケットに分割して必要なときだけに送る(必要なときだけ電波を出す)事を想定しているので、音声通話の瞬断防止のためのソフトハンドオーバー機能や、遠近問題対策の電力制御は省略してある。
【設備等々】
1xEVDOを使えるようにするには、既存のcdmaOneの基地局に「アクセスポイント」というIPネットワークとの接続設備を追加し、交換局にはPDSNやHAといった、交換機に相当する設備(特殊な機能を持ったルーターのようなもの)を追加する。
HSDPAも、製造メーカにもよるが、無線装置のソフトウェアを書き換えるか、簡単な部品交換を行い、これまた交換機相当のSGSN,GGSNという装置を追加して既存の無線装置からデータ通信部分を分岐させる。
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基地局のアンテナや電源設備はもちろんのこと、通話エリア、セル、周波数帯などは既存のものをほぼそのまま利用でき、音声通話の設備とも共用できる。ただし、1xEVDOはデータ通信用に専用のチャンネル(同一セル内にあるすべてのEVDO用端末が共用)を確保できるようにしておく。このため、新規に設備を作らなければならないW-CDMAなどに比べて相当安上がりですむらしい。なお、HSDPAはW-CDMAと同一の通話エリア、周波数帯で共存できることになっているが、フルパワーを出させようとすると制御の都合上1xEVDOと同じような使い方になるとかならないとか。
図にもあるとおり、1xEVDOやHSDPAデータは音声通話用の交換機や各種制御用装置を通さないようになっているため、データ通信側の回線が混み合っている間でも音声通話には影響は少ない。
なお、