タイムマシンが火を噴くぜ!(その1)

私にはかねてよりおよそ本業とは縁のなさそうなことをよく記憶しているという妙な習性らしきものがあり、ふとしたことからそんな記憶が爆発的に蘇ることがある。時節柄狂い咲きとでも言うのだろうか。
このたびそんな動作のカラクリに迫る手がかりとなりそうなものの存在を思い出すことが出来た。それは私が大学にいた頃にとっていた教養科目のノートのなれの果ての一部であり、『認知心理学』なる記憶や知覚といった動作のカラクリを扱った科目なのだが、今後のためにこのページに残しておくこととする。


[おしながき]
 * 記憶にございませんのナゾ
 * 記憶の動作に迫る
 * 暗記のナゾ
 * よりしっかりとした暗記のナゾ
 * おまけ・スローモーションのナゾ
なお、私はその分野の専門家ではないため、以下の内容についての質問に的確な回答を返すことの出来る保証はどこにもないことを付け加えておかねばなるまい。以下はあくまで教養の範囲内、である。
(以下、ノートのなれの果て)
《記憶にございませんのナゾ》
かなり昔の話になるが、さる方の口から生まれて以来の名文句となる「記憶にございません」という台詞。その方は次の3つのうち、どれにあたるのだろうか?
A. もとから記憶していない
B. 記憶したが思い出せない
C. 記憶しているが思う所あって話さない
AとBについては、認知心理学での説明が可能とこのと。
記憶の動作は次の3つから成り立っている。
1. 記銘(memorization)・・・覚え込む
2. 保持(retention)・・・・覚えておく
3. 取り出し(retrieval)・・・思い出す
最後の「取り出し」には3種類あり、それらは「再生」「再認」「再構成」と呼ばれている。漢字の読み書きに例えると、それぞれ順に「書き取り」「読み」「書き間違い」にあたる。
さて、人間の記憶システムは
1. 感覚記憶
2. 短期記憶
3. 長期記憶
の3つに大きく分けられ、それぞれ異なった特徴を持つことが知られている。中でも大きく異なるのは情報が保存される時間であり、感覚記憶がほんの一瞬、短期記憶が長くて数分、長期記憶ではほぼ無制限である。
《記憶の動作に迫る》
短期記憶は、目だとか耳などの器官が感覚情報を一時的に蓄えておくための記憶とされている。その特徴を挙げてみると次のようになる。
 * 保存されるのはごく短時間
 * イメージ・画像情報・感覚の類として保存される
 * 情報の符号化・置き換えなどは行われない
 * かなり詳細に保存される
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身近なところでは「残像」がいい例にになるだろうか。猫とネズミをそれぞれ団扇の片面に描いて高速回転させると一緒に見えるというのは残像の仕業である。
さて、ここでSperling氏の実験レポート(1960)をば。
この実験に使うのは、1000分の1秒単位で瞬間的に映像を表示できるタキストスコープという今週のビックリドッキリ、いや装置であル。内部にはライトとハーフミラーがあり、点灯するライトの位置を変えることにより映し出す映像を瞬時に切り替えることが可能だ。
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実験ではこの装置を使いアルファベットが12文字書いてある絵を0.05秒おきに見せては隠し、内容を覚えてもらう動作を行うというものだ。
で、結果だがまず文字だけのカードを見せて思い出せるだけ思い出してもらったところ(全体再生法と呼ぶ)、思い出せたのは全12文字中、平均4文字であった。
続いて、文字だけのカード(左)マーカーのついたカード(右)を交互に見せ、こんどはマーカーのある行だけ思い出してもらったところ(部分再生法と呼ぶ)・・・思い出せたのは全4文字中3文字に増えていた。
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再生率は、全体再生法では33%、部分再生法では75%となった。何らかの手掛かりがあると、記憶の再生率がよくなるという結果になったが、その理由については後程。