Projectile X -HDMLから脱出せよ(1)-

事の始まりは2001年の12月まで遡る。
ケータイ向けサイトの次世代(世界共通)規格、WAP2.0がついに現実世界に登場した。次世代HTML、xHTMLでサイトを作成できるようになり、これまでのWAPに比べてサイト作成は手軽になった。
・・・・が、これこそが大問題であった。
サイト作成用の言語がこれまでのHDMLからxHTMLに変わる。両者の間に互換性は無い。
幸いにしてWAPの規格で必要となっている中継サーバーで両者を自動変換できる仕組みになってはいるが、限界はある。


この問題に直面していたサイトがあった。
少しづつながらケータイ向けサイトへの脱皮を遂げつつあった「MAX Whitewing( http://y7.net/gfujip)」がそれである。
当時ezwebに対応していたこのサイトはHDMLで記述されていた。その後、コンテンツ管理を容易にすることをねらい、CGIを駆使したシステムへ移行。別の規格、cHTMLに対応したi-modeを初めとする他のケータイにも順次対応していった。
だが、このシステムは問題を抱えていた。
このシステムはHDMLに対応するケータイ、cHTMLに対応するケータイおよびPC向けにそれぞれ個別のシステムを充てていたが、ブラウザ向けの出力言語以外は動作が非常に似通っていた。それ故に手間のかかる、非効率なシステムとなっていた。
今回の話は、「MAX Whitewing」なるサイトがHDMLを使わず、かつこれまで通り全てのケータイとPCから利用のできるサイトへの脱皮を果たすまでの記録である。
2002年3月、構想の作成にとりかかる。CGIシステムは、コンテンツを納めたファイルと、その管理と表示を受け持つCGIからなっていた。コンテンツ側の修正を行うと、膨大な手間がかかることは明らかであったため、2003年4月を目処にCGIシステムのみを入れ替えることを決めた。
新しいシステムは、PC向けとケータイ向けの2つだけに統一し、ケータイ向けのシステムは1つで全てのケータイに対応させることにした。従来からあるHDML対応のケータイに対しても、xHTML→HDML変換サーバー経由でアクセスできるようにすることとした。
しかし、構想は最初から問題を抱えていた。当時「MAX Whitewing」で使用しているCGIシステムは、掲示板タイプと日記帳タイプの2つしかなく、両者でカバーできない、リンク帳タイプのページはそのままケータイ未対応として残っていた。掲示板タイプのCGIシステムの流用は可能だったが、掲示板向けの設計のため誰でも書き込めるという問題がある。
そこで、新システム移行は2段階に分けて行うこととなった。
先に掲示板CGIを改造して管理者だけが書き込める「見出し付きメモ帳」タイプのCGIを先に作り、全てのコンテンツをケータイ対応にした後CGIシステムを入れ替えることとした。
第1段階のメモ帳型CGIの開発は、これまでに手掛けていた小規模な改造のノウハウが活用され比較的順調に進んだ。画面レイアウト設定機能の分離(スタイルシート化)も同時に行われていた。
第1段階最大の難関、通常のHTMLファイルをCGI向けのデータファイルに焼き直す作業も、変換ツールを作成により少しづつ進み、2002年10月にはメモ帳型CGIが完成。「MAX Whitewing」は全てのコーナーがケータイ対応となった。
しかし、ケータイの世界は順調に進む作業を軽く上回る速度で動いていた。
これまでcHTMLを使っていたNTT DoCoMoも第3世代携帯・FOMAが2002年秋以降発売する機種にてWAP2.0に対応すると発表(注:その後発売延期を重ねて2003年になっても発売されていない)。上位機種へのWAP2.0対応で先行するauも、これまで従来型HDML対応のまま残っていた下位機種にWAP2.0対応機種の投入を始めた。(注:こちらはA1101Sが2002年末に登場した)
脱HDML→xHTMLへの移行は制作側の予想以上に速いペースであった。(続く)