寮祭顛末記(ロードレース編)

年に1度のお祭り騒ぎ・寮祭。その火ぶたを切った御輿行列のあと、打ち上げが行われた。そしていつものように夜遅くまで寮内はにぎわっていた。をいをい、そんなんでええんかいな。
『第2ラウンド:ロードレース』
御輿行列から2日後、朝は意外と早くやってきた。街中にもまだジョギングをしている人たちはいない。寝ぼけ眼を濃い紅茶でさまし、支度に入る。これから約35キロほど離れた野尻湖まで、自らの足で駆けてゆく。こういったマラソン大会のようなことは、長野県内の高校では定例行事としてよく行われているとのこと。しかも夜通しで。


時報と共に出発し、早朝の町中を駆け抜ける。飲み会明けとおぼしき人たちも少し見られた。朝早くに街を抜けてしまったため、ほとんど人に出会うことはなかった。1時間ほど走ると、もう山の中だ。ここから先は、御輿行列とはうって変わって女の人とは無縁の個人の戦い・・・・というように表向きはなっている。
今回走るコースの大半が山の中である。ちょうど紅葉の見頃。前日に車でコース全体の下見に行ったのだが、窓から風景を遠い目で見ながらのつぶやきが聞こえる。
「隣にカノジョ乗せて走りたいな~」
同様なつぶやきが時折聞こえた。野郎どもの大半はこのような考え方をするものなのか。かくいう私も一度はこんな事をしてみたいのだが、いかんせん足が無ぇ・・・(泣)。
しかし、そんな考えは当日にはふっとんでいた。ある者は一心不乱に走り、またある者は友達と話をしながらのんびり歩き、またある者は獣道や崖を昇ってヘアピンカーブをショートカットしていった。あ、それってわしのことやん(笑)。
そして峠のチェックポイントについた。ロードレースでは30人くらいが走り、残りの20人近くはゴールと数カ所のチェックポイントに散らばってサポートに回っている。通過順位を確認してみたところ、5位だった。意外と早い。
しかし、油断は禁物である。このロードレースでは、数カ所ほどチェックポイントが設けてあるのだが、必ずしも通過しなくてもよい。水分補給と、記念撮影がないだけで、ゴールまで自らの足で走りさえすれば、どのようなルートを通ってもよいことになっている。過去にはチェックポイントを全く通ることなくゴールした人たちもいる(単なる方向音痴だったとの説もある)。
休みもそこそこに峠のチェックポイントを出る。どういうわけだか、足を動かしていないと、じわりじわりとした痛みがくるのだ。そしてその痛みは走ると何故か消える。困ったことにペースを落とせない。いつの間にやら2人ほど抜いてしまった。
というわけで適当にペースを調節しながら走っていると、極端におなかが空いてきた。朝御飯はそこそこ食べてきたのだが・・・と思いながらも店を探す。しかし峠を越えた先に広がるはリンゴ畑と田園。見ている分にはいいのだが、おなかは膨れない。ときたま店は見つかるのだが、日曜日なので開いていない(泣)。
店を探しながら走っていると、走るペースが少しづつ上がっているようだ。飢えのパワー、恐るべし(笑)。チェックポイントで聞いたところでは、すぐ先に2人ほど走っているとのこと。2~3分前に近くの店へ入っていったそうだ。
「なに、店?」
すかさず栄養補給。先の2人はサンドイッチ・おにぎりなどを補給し、入れ替わりに私はドリンクで栄養補給。店の人と話をしながら少々休憩をとる。どうやらどこぞの体育会系サークルの合宿と思われていたらしい。今回のロードレースのコースを走っていく学生は、意外と多いようだ。
足を止めるに止められないので、ひたすら走る。また一人抜き、4位に浮上。走っている最中にものを食べるのはよくない(らしい)のだよ、ふっふっふ。しかし、かなり時間差が付いているらしく、長い直線コースにもかかわらず先をゆく人の姿が見えない。1時間ほどひた走るが追いつく気配がない。が・・・・
最後のチェックポイントでようやく追いついた。足が痛くなりかけてきたので休みもそこそこに出る。ここで3位に浮上。15分ほど前に、熾烈な1位争いをしている2人が駆け抜けていったとのこと。果たして抜けるか・・・・?
ゴールの野尻湖へと通じる国道をひた走る。車はよく通るが人影がない。もうそろそろ通りの店も開きだしてもいいのだが・・・、ひっそりとしている。野尻湖が最もにぎわうのは夏。観光シーズンが終わると、毎年湖の水をすっかり抜いて、湖底に眠る象の化石の発掘調査が行われる。
そんなひっそりとした、落ち葉舞う街道を走っていると、のんびり歩く3人組が道路沿いのコンビニへ入っていくのが見えた。見た感じは寮の人間っぽいのだが、チェックポイントの情報では私の先にいるのは2人だけ。あれれ・・・・?コンビニに入っていく3人を後目にひたすら走る我輩。しかし、このことが後ほどちょっとした騒動に発展する。
結局3位でゴール。用意された昼飯(カレーとお汁粉)を食べ、休息をとる。できたてで、おいしい。最後の方でゴールした人には、かなり煮詰まってキャラメルのようになったカレーと、冷めたご飯が待っている(笑)。ついでに罰ゲームも。
そして着々とランナー達がゴールしていくのだが、さきほどコンビニへ入っていた3人組はいっこうにゴールしない。途中で私が抜いていった人たちが先にやって来る。
約30分後、例の3人組がゴール。他のランナーが疲れ切った表情をしている中、3人はいつもと変わらぬそぶりをしていた。首をひねるサポートメンバー。そして、最初から歩いていくことを決め込んでいた面々がゴール。しかし、まだゴールしていない人たちもいる。その中には優勝争いの筆頭候補もいるのだ。
しばらくしてその筆頭候補がゴール。夜更かしがたたってスタート時間が遅れてしまったのだそうだ。しかしまだ一人、ゴールしていない。たぶんそいつも後発組なのだろう。・・・と思いきや、寮の留守番部隊に何人走っていったかを確認してみたところ、まだゴールしていないと思われていた彼は、なんとスタートすらしていなかったのだ。
なんぢゃそりゃ~ぁっっ
加えて、コンビニへ入っていった例の3人組に、ヒッチハイク疑惑発覚。もし本当ならば、当然失格。そういえば、去年のロードレースでもヒッチハイクを敢行した面々がいたような気がする。
結局、その3人は途中区間をヒッチハイクしたことがわかり、失格となった。1週間後の表彰式&打ち上げ会で、お仕置きが待っている(詳細はまた後ほど)。これが一段落し、休憩や記念撮影を済ませてロードレースは終了した。
寮に帰った面々は、長距離を走ってくたくたになった体を途中の温泉などで癒し、来週の行事に備える。
(つづく)の前に、もう一つ。じつは、後日の話でヒッチハイクをしていた人が例の3人組の他に、あと2人いたのだ。誰なのかは表彰式の時に明らかにされる。(つづく)
Rec/Mix:1998-12-25