BCMCS

これまでの無線通信のシステムは、無線の帯域を時間なり符号なりで細かく分けて、それぞれを基地局~端末間の1対1で使うものが主であった。そこへTVやラジオ同様の「1箇所から送信し、複数の端末で同時に受信」という考え方を組み込んだものがBCMCSである。
最大のメリットは、どれだけ端末が増えても、送信に使うチャンネルが「番組あたり1つ」で済むことだ。受信のみに限定されるが、1つの基地局エリア内にどれだけ端末が増えても、それらが同じ番組を受信している限り、回線が混み合うことはない。その代わり、1台の端末が受信に失敗した場合、データをその都度再送していると他の端末が巻き添えを食らってしまうので、再送は使えない。再送となることが起きないよう、最も電波状態が悪いユーザーに合わせて、ノイズに強い変調を使わざるを得なくなるが、送るデータに強力な誤り訂正をかけるなどの対策で、できるだけ速度と受信条件の両立を図っている。


さて、BCMCSを導入するにあたり、端末からデータの送信元(大方、サーバーとなる)の間にどうやって「1対多」で配信できる仕組みを作るかだが、その仕組みは大きく2段階に分かれており、「データ送信元~基地局間」「基地局~端末間」にそれぞれ配信用の仕掛けを組み込むこととなる。
まず、データの送信元から基地局までの間だが、両者の間がIPベースのネットワークである前提が必要ながら、非常に単純となっている。
IPベースのネットワークには、BCMCSができる前から「マルチキャスト配信」の仕組みが出来上がっており、一定の手順を踏めば簡単にデータをばら撒くことができる。
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大まかには、
1.受信側(ここでは基地局)が最寄のルーターにマルチキャストグループの登録をする
2.送信側が最寄のルーターへ向けてあらかじめ決められた「マルチキャストアドレス」宛に配信データを投げる。マルチキャストアドレスで指定できる配信範囲は、特定のルーターの周囲から、自分が接続しているネットワーク全体まで、ある程度決められている。
3.配信データを受け取ったルーターは、あて先のマルチキャストアドレスに従い、あて先の最寄ルーターへだけ転送するなり、周囲の端末やルーターにデータを配信する等の操作を行う。
つづいて基地局から端末の間だが、こちらはEVDOのEV-DOの下り方向通信に少々細工をすることになる。
通常のEVDOでは、端末方向のデータはTDM(Time Division Multipling:時分割多重)化して1つのタイムスロットを1つの端末だけ使わせる。このとき、どのスロットを誰にどのくらい割り当てるかを調整して、全員のスループットの合計を向上させている。この割り当ての調整がEV-DOのポイントの1つで、「スケジューリング」と呼ばれている。
BCMCSでは「スケジューリング」に少々細工をし、タイムスロットの一部を「全員が受信できる」ように開放し、誰でも受信できるようにしてしまう。
あとは、TVのスイッチを入れる要領でその時間に「放送」されている「番組」を受信するなり、録画予約をしておくなりするだけだ。
もともとあるスケジューリングの仕組みを少々手直しするだけなので、BCMCSと通常の1対1通信を混在させることも可能となっている。
なお、このままでは有料コンテンツを配信するとお金を払っていない人にも受信されてしまうため、事前にコンテンツ再生用の鍵を何らかの方法で事前に配っておき、BCMCSで受信した後で鍵を持っている人だけコンテンツを再生できるようにするなどの対処がとられている。
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このBCMCS、3GPP2の規格上はEVDOのオプション扱いとなっており、EVDO自体のバージョンには依存しないことになっている。
BCMCSは現行の1x EVDO規格「Rev.0」の発展形「Rev.A」の一部である…として紹介されているところもあるが、実際には「Rev.A」抜きでBCMCSができないわけではなく、auからRev.A開始とアナウンスされる前から「Rev.0」である「2.4Mbpsエリア」でしっかり受信できるようになっている。

Last Updated on 2012/05/27