マルチキャリア伝送

移動体通信で問題になるフェージングには「フラットフェージング」「周波数選択性フェージング」の2つがある。このうち、フラットフェージングは空間・偏波などでのダイバーシティ受信でかなりカバーできるのだが、周波数選択性フェージングとなると、これといった対策があまりない。
アダプティブアレイアンテナは、割と広いアンテナスペースが必要になり、信号処理で波形歪みを補正する「適応自動等化」という方法でも、ハードの性能にもよるが扱える信号の伝送速度・帯域幅に限界がある。


そこで、高速度の信号を送るために考え出されたのが「マルチキャリア伝送」である。送ろうとする信号を、複数のルートに分割し、各ルートで別々の周波数にて変調して送ろうというものだ。
2MHz以上の帯域幅で伝送すると周波数選択性フェージングを受けてしまうことがわかっている場所で5MHzの帯域幅を確保したいとする。そのときは送ろうとする信号を「帯域幅2MHz以下」の送受信機のセットを複数組用意し、それらの合計が「5MHz以上」となるようにする。
ここでは1MHzの帯域幅のルートに5分割しているが、それぞれの伝送速度は遅い速度で変調されているので帯域幅は1/5と狭くなる。分割したルートの数だけ送受信機が必要になるが、そのままでは周波数選択性フェージングを受けてしまう所をせいぜいフラットフェージングにとどめることができる。
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フラットフェージングとなると受信側では空間ダイバーシティなどで楽にフェージングを抑えることができるので、それぞれのルートの信号を1つにまとめることで、5MHzの帯域幅を確保できる。また、電波の出し方、受け方にもよるが、アンテナを1本だけで済ませることもできる。実際に複数組み必要なのは、信号を電波にのせる「トランシーバー」だ。
マルチキャリア伝送はcdma2000(x3モード)で採用されていて、帯域幅1.25MHzのチャンネルを3つ同時に使うことにより、全体で 3.75MHzの帯域幅を確保している。これにより、アダプティブアレイアンテナなどを使うことなく、既存のcdmaOneの設備を利用して広い帯域幅を確保できるようになっている。無線LANにも同様の手法をとっている製品がある。
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Last Updated on 2012/05/27