Gold系列

M系列には、相互相関値を常に低く押さえることのできる「プリファードペア」が少ないこともあり、実際にはなかなか使われていない。そこで考え出されたものの1つに「Gold符号系列」がある。Gold符号系列は、周期が等しく、「プリファードペア」である2つのM系列を単純に加算することで得られ、符号の発生回路もM系列のものを流用できる。
[image]
主な特性は次の通り。
1.符号長がkビットの場合、1つの回路からpower(2,k+1)通りの符号系列が得られる。


2.相互相関値の絶対値は最大でもM系列の約power(2,1/2)倍に抑えられる。
3.相互相関値はきわめてレベルの低い3つの値に限定される。
比較的多くのパターンが得られるこの系列だが、M系列から派生したモノなので相互相関値を0にする事はできない。また、自己相関特性もM系列に劣る。しかし相互相関特性が簡単な計算で割り出せ、同時に通話できる回線数の見積もりが簡単にできるので、非同期CDMAの拡散符号としてよく用いられている。
試しに32ビットのGold系列を生成してみた。
「タップの位置:1段目と5段目」のM系列と
[0,0,0,0,0,0,0,0,1,1,0,1,0,1,1,0,1,0,0,1,1,1,1,1,0,1,0,1,0,1,1,0,]
「タップの位置:1段目と4段目」のM系列からは
[0,0,0,0,0,1,0,0,0,1,1,0,0,1,0,1,0,1,1,1,1,1,0,0,0,0,1,0,0,0,1,1,]
以下のようなGold系列が出来上がる。
[0,0,0,0,0,1,0,0,1,0,1,1,0,0,1,1,1,1,1,0,0,0,1,1,0,1,1,1,0,1,0,1,]
また、シフトレジスタの初期値を変えて作った2つのM系列からは
[0,0,0,0,0,0,0,1,0,0,0,1,0,0,1,1,0,1,0,0,0,0,1,0,0,1,0,0,1,0,1,0,]
[0,0,0,0,0,1,0,1,0,1,1,1,0,1,1,0,0,0,1,1,1,1,1,0,0,1,1,0,1,0,0,1,]
以下のようなGold系列が出来上がる。タップ位置は1段目と3段目。
[0,0,0,0,0,1,0,0,0,1,1,0,0,1,0,1,0,1,1,1,1,1,0,0,0,0,1,0,0,0,1,1,]
なお、これでも符号の数が足りないときには3つのM系列から合成できる「Kasami系列」というものも用意されている。原理と性質の詳細はGold系列の延長線上にあるので割愛。