周波数ホッピング

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「CDMA」を実現させる「スペクトル拡散」の手順には大まかには2通りあり、登場した「直接拡散」と、「周波数ホッピング(FH:Frequency Hopping)」という方式がある。
直接拡散方式では、1次変調した信号にPN符号を直接掛け合わせてスペクトル拡散を行うが、周波数ホッピング方式では、1次変調した信号を、適当なタイミングで周波数変換をかけることによってスペクトル拡散を行う。


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[ホッピングパターンの一例]
周波数変換のパターンは「ホッピングパターン」といい、このパターンに従って周波数変換を行うと、傍目には搬送波周波数ががランダムかつ広い範囲で飛び回るようになる。
周波数ホッピングを行うと、周波数スペクトルは下のようになる。なお、この図は周波数スペクトルを長い時間観測したときの平均をとったもので、それぞれの山は、別々のタイミングで発生したものである。信号スペクトルの形は直接拡散のものと多少違うが、元の信号を周波数帯域が広く、電力密度の薄い信号に変換するという点ではよく似ている。
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動作だけをとってみれば、直接拡散方式のPN符号がホッピングパターンに置き換わったようなものといえるだろう。
逆拡散も直接拡散方式と似たようなことを行う。元の信号を取り出すには、受信した信号を送信したときと同じホッピングパターンを使って周波数変換をかける。この場合、ホッピングパターンと周波数変換のタイミングが一致したときのみ元の信号が取り出せる。
周波数ホッピング方式では、1次変調での信号速度(ビットレート)とホッピング速度の割合によって、SFH(Slow FH)とFFH(Fast FH)の2つに分かれる。SFHはビットレートがホッピング速度よりも十分速いケースを指し、FFHはホッピング速度がビットレートとほぼ同じか、速いケースを指す。
周波数ホッピングで周波数変換を行う「ホッピングシンセサイザー」は、安価かつ高速で動作するものが作りにくいものの、広帯域に信号を拡散させやすいため、今までは主に軍事用の通信機器で使用されていた。が、最近になってFFHも1つのチップで実現できるようになり、「bluetooth」で採用されている。
その一方SFH用のホッピングシンセサイザーは比較的作りやすいため、GSM規格の携帯で使われている。周波数ホッピングは周波数ダイバーシティを行っているのと似たような効果が得られるため、GSMではフェージング対策の1つとして用いている。フェージングとその対策は別コーナーにて