Hot wine

学生時代終わりの5年間を長野市内で過ごしていた。それから3,4年程しか経っていないのだが、随分な期間が過ぎたような錯覚を覚える。度重なる引っ越しがそう思わせているのだろうか。
当時の仮の宿は長野駅から見れば南側の住宅街にあり、対する北側に善光寺と中心市街地がある。
オリンピックを契機として町の様子も随分変わった。その頃からだろうか、長野駅そばから善光寺へ続く通りでは月に1度位のペースで歩行者天国になっていた。


フリーマーケットの時もあれば、大道芸人が芸を競っていたこともあった。露店も並んでいるのだが、祭りの類でよく見かける露店とは違った、沿道の住民・商店主有志の出店が目に付く。通りの活性化策の一環らしい。
お祭りというと、ビールか、日本酒あたりが真っ先に浮かんでくるが、秋になると、露店の品揃えにホットワインが加わっていた。
ホットワインを見かけるようになったのはこの頃…の様な気がする。
で、その品は列車の車内販売でコーヒーを売る要領で、ポットから紙コップに出す形で売っていた。1杯あたりの値段も当時学生だった私にも十分手の届く範囲で、体もそこそこ暖まる上に、日本酒と違って酒の回りが比較的緩やかだった…そんな気がしただけかもしれない…こともあり、肌寒い街を歩くにはもってこいの品だった。
そうしてホットワインなるものの存在を知り、当時のバイト先でやっていた共同購入のカタログでそれを目聡く見つけるや早速取り寄せていた。私の記憶が確かならばそれはドイツものだったが、産地よりも瓶の形が記憶に残っている。酒のボトルというよりは、洗剤の詰替用ボトルに近い形をしていたかもしれない。
余談だが、かの国にはワインのみならずビールを暖めて飲む習慣とそのための道具があるという話を耳にしたことがある。しかし、真偽の程は確かめていない。…googleに訊けばわかるか。
さて、取り寄せたホットワインだが、余程気に入ったのか、適当な時間が見つかると熱燗の要領で暖めて飲んでいた。肴なしでも十分にいける。
当時出入りしていた研究室でも、とある日の深夜にそのワインを暖めて水筒に詰めて持っていき、パソコンで研究材料を弄りつつ一息入れていたことがある。後にも先にも持っていったのはその1回だけなのだが、飲んでいるところを目撃した同期組がかなり驚いていた。
研究室で酒を飲むこと自体が驚きの材料だったのか、はたまたホットワインが物珍しかったのかのどちらかだとは思うが、当時まだ大祭に店を出していた時に使っていたカクテルの材料が大瓶のブランデーを筆頭に若干残っており、休憩部屋でたまにそれらを飲む人たちもいたので、後者ではないかと思う。
そういえば、紅茶にブランデーを入れることをやりだしたのもこの頃だった。

肌寒さで目が覚めた。
冬には程遠い沖縄の夜だが、そろそろ長袖と毛布の出番だろうか。
あとは体を温める酒だが、沖縄では適当な店でホットワインを探すよりも、それなりの泡盛をお湯で割った方が手っ取り早い…かもしれない。