マッチドフィルター

CDMA方式の通信では、逆拡散する際に「拡散したときに使ったものと同じPN符号を」「拡散したときと同じタイミングで」掛け合わせることが常に必要になる。この操作はかなり厄介で、cdmaOneではGPSを使って時刻を合わせることで同期捕捉をやりやすくしていたが、W-CDMAでは「マッチドフィルタリング法」を行っている。特殊なハードの利用を前提とするものの、PN符号発生タイミングが合っているかを瞬間的に調べることができる。
「マッチドフィルタリング法」で鍵を握るのが、SAW素子やCCD(カメラでもお馴染み)を使って作られる相関器であるといっても、アナログ波形を扱うシフトレジスタと言ってもよいかもしれない。


SAW素子を使ったものの場合、入力した信号に対して1チップづつ遅れた信号を取り出せるタップがついていて、PN符号1周期分が丸ごと、かつ同時に見えるようになっている。このタップを、あらかじめ送信した信号で使っているPN符号に合わせて2つに分ける。
例えば目的のPN符号が「10010011011」となっていたら、SAW素子のタップを「1に対応するタップ(1,4,7,8,10,11番目)」「0に対応するタップ(2,3,5,6,9番目)」に分けておく。
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1に対応するタップと0に対応するタップからの出力をそれぞれ加算し、両者の差を取るとその時々の相関値が出てくる。PN符号が合っていればこの相関値をPN符号1周期分だけ監視していると、必ず1カ所相関値が急激に高くなる場所が現れる。
このようにして、「マッチドフィルタリング法」ではPN符号1周期の時間で同期捕捉できる。なお、W-CDMAでは可変長かつ複数パターンのPN符号を扱うので、SAWやCCDなどに取り付けるタップを自在に切り替えられる「コンボルバ素子」が使われている。