「基礎編」カテゴリーアーカイブ

誤り訂正符号

「レイク受信」「可変速符号化+ノイズサプレッションのEVRC」「Voice Activation」「各種ダイバーシティ受信」等々、各種の方法で干渉をある程度排除できても、完全に取り除くことは難しい。そこで、送られた信号の誤りを受け手側で修正できるようにするのが「誤り訂正符号」である。
誤り訂正符号は、もとになる信号から一定の法則に従って作成され、元の信号と一緒に送る。受け手側で届いた信号に対してちょっとした計算をしてやると、元の信号が確実かつ正確に取り出せる。

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回線容量と通話品質

CDMA方式の移動体通信システムには、従来型TDMA/FDMA方式では問題にならなかったものが問題になったり、あるいは考え方が全く異なるものがあったりする。回線の考え方もその1つである。
従来のTDMA/FDMA方式では回線容量は物理的な周波数、タイムスロットの位置などで明確に定めることができ、回線容量を上回る需要があった場合…非常に多数の人が同時に電話をかけ始めた場合などは利用できないことがある。専門的には「呼損が発生している」と呼んでいる。

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マッチドフィルター

CDMA方式の通信では、逆拡散する際に「拡散したときに使ったものと同じPN符号を」「拡散したときと同じタイミングで」掛け合わせることが常に必要になる。この操作はかなり厄介で、cdmaOneではGPSを使って時刻を合わせることで同期捕捉をやりやすくしていたが、W-CDMAでは「マッチドフィルタリング法」を行っている。特殊なハードの利用を前提とするものの、PN符号発生タイミングが合っているかを瞬間的に調べることができる。
「マッチドフィルタリング法」で鍵を握るのが、SAW素子やCCD(カメラでもお馴染み)を使って作られる相関器であるといっても、アナログ波形を扱うシフトレジスタと言ってもよいかもしれない。

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同期追跡

通常の通信では、受信した信号は雑音に対して一定以上の大きさを保っているが、CDMA方式の信号の大きさは、従来のものに比べて著しく低い。そのため、少しでも同期がずれると、受信信号を簡単に見失う。そのため、同期捕捉の完了後も常に同期がとれているかを見なければならない。
代表的な方法はいくらかあるが、だいたいは次の通り。
1. PN符号の発生タイミングを、1チップよりもごく短い周期でずらす回路を用意する
2. PN符号の発生タイミングのずれを、同期捕捉の段階で一定の範囲内に収めておく

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同期捕捉

CDMA方式ならではの拡散変調を行った信号は、周波数帯域が広く、かつ弱い信号になっている。ここから送られてきた信号を取り出すには、逆拡散する際に「拡散したときに使ったものと同じPN符号を」「拡散したときと同じタイミング」で掛け合わせることが常に必要になる。符号の種類は、制御用のチャンネルが使って事前に合わせておけばよい。残るはタイミング合わせのみ。これを「同期捕捉」という。
代表的なものには「シリアルサーチ法」「マッチドフィルタリング法」の2つがある。

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ソフトハンドオーバー

基地局や端末から出ている電波の届く範囲には限度がある。そこで通常では端末の位置を把握して最寄りの基地局へ繋ぎ直す「ハンドオーバー」を随時行っているが、その中にCDMA方式ならでは、というか相性のいい方法がある。「ソフトハンドオーバー」である。
大まかな手順は次のようになる。
1.携帯端末は、基地局・制御局との間で常に位置情報の交換を行う。
2.あらかじめ、通話エリアを基地局の電波が届く範囲を元に「セル」と呼ばれる区画に区切っておく。

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レイク受信

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「レイク受信」は、電波の反射などによって受信時に位相差・時間差がついた信号成分を別々に取り出し、位相・時間を揃えて合成する方法である。 cdmaOneでは3つまで取り出せるが、FOMAをはじめW-CDMAでは6つまでいけるという。では、どのようにするか?
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基地局と端末間の電波は一直線で届くとは限らない。建物や山などに反射して届くこともある。市街地・屋内では「マルチパス現象」が顕著で、直接届いたものの他、各所で反射した電波が同じ端末に届くことがある。飛んできた距離に差があるために時間差が生じており、どれを使うか困る事もある。

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電力制御

近距離からの信号が、遠距離からの弱い信号をかき消す事がある「遠近問題」。これを解決するには、送信電力制御で端末の信号を一番強い信号を発する端末の出力を必要最低限にまで絞るのが一番である。
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送信電力の制御は大まかに2通りある。一つは送信側と受信側が連携して電力を調節する「クローズドループ」。もう一つは送信側のみで操作する「オープンループ」。

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CDMAと遠近問題

「遠近問題」とは、複数の端末が1つの基地局と通信するときに起こる「距離のいたずら」である。
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電波も、光同様に遠くなる程弱くなる。何もない空間では距離の2乗に反比例して減衰するが、建物などの障害物がある空間では3~4乗以上に反比例して急激に減衰することもある。
このため、端末で同じ強さの電波を出しても、基地局に届くときには端末と基地局の位置によって電波の強さはまちまちになる。「基地局付近にいる端末」から届いた強力な電波が「基地局から離れた所にある端末」から出た弱い電波をかき消してしまいかねない。いくらCDMA/スペクトル拡散方式が他からの干渉を排除する能力に優れていても、限度がある。

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