Chase on edge

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お夜食の買い出しに出かけようと外へ出たところ、某ホテルの近くがやけに騒がしい。
首都高の高架下に人だかりが数組出来ている。どうみても時間帯に相応しくない人数だ。その中心部では学生らしき男が上着を広げて何かを受け止めようとしている様子。
道を挟んだ向かい側にも少人数の人だかりが数組できており、皆一様に上を見ている…その方向からは猫らしき鳴き声。いや、猫が本当にいた。地上から伸ばされたケーブルと、その終端付近に設けられた箱のてっぺんの、文字通りの崖っぷちに座っていた。


ケーブル箱の上には、非常電話もしくは別の操作盤らしき箱が置かれており、猫といえどもよじ登るのは一筋縄ではいかなさそうだ。かといって降りようにもケーブルに梯子状の足場が付いているはずもなく、真下には歩道の石畳が敷き詰められている。すぐ脇の分離帯付近に生け垣もあるが、着地地点と方法を間違えればひとたまりもない。
既に119番通報はなされているらしく、暫くしてレスキュー隊が到着。ひとまず猫の居る操作盤付近の真下に、隊員が落下受け止め用のシートを広げて最悪の事態に備える。
…それを知ってか知らずか、猫の姿が一時消えた。どうも、端子板と高架橋の側壁の間に僅かな隙間があり、そこから脱出出来る…ように思えたが、体を入れるのがやっとだったのかそれはかなわなかったらしく、程なく猫は元の崖っぷちに戻ってきた。
相変わらず鳴き声と、首都高を走る車の走行音があたりに響き渡っている。
既に到着している救助工作車搭載の梯子と、道路管理事務所の高所作業車では高さが足りないらしく、ひとまず現場付近の車両通行規制を敷きつつ、レスキュー隊員による状況の監視が続く。
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暫くして、サイレンの音がやんわりと近づいてきた。