高速化へのアプローチ

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世は高速データ通信のニーズがさながらうなぎのぼり。固定通信の世界でも、ADSL、ケーブルテレビ、果ては光と高速大容量への一本道をまっしぐら。いくら導入当時最新の通信方式といえども、ユーザー数やユーザーあたりの通信量が増えるとたちどころに大渋滞。
さしものCDMAといえども、この流れには逆らえない。いや、既に通信速度を高速化するための手法がある程度検討・確立されている。ここでは主なものを3つ挙げてみることとする。


【1.既存同様の線を「増やす」】
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この手法では、変調方式や伝送手順といった管の規格はそのままに、同時に使える管の本数を増やす。cdmaOneのデータ通信速度の向上(14.4kから64k)や、EVDO Rev.AからRev.Bへの進化がこれに相当する。管の規格は基本的にそのままなので、比較的お手軽かつ安価で導入できる。
cdmaOneの場合は、受信の際に同時に扱うことのできる拡散コードの数を最大5にまで増やしている。一方、EVDO Rev.Bでは基本となる1.25MHzの周波数チャンネルを最大同時に15本まで同時に利用できるようになっている。一見設備増設の手間が掛かりそうにもみえるが、実際に導入する場合は既存のシステムのソフトウェアもしくは部品に若干手を加えるだけで済むことが多い。大概の基地局とその制御システムはユーザーの利用状況にもよるが1つの装置で複数の周波数帯を(端末あたり1本だけだが)扱えるようになっている。
【2.既存線の「容量を増やす」】
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この手法では、管の大きさに相当する「無線の周波数帯域」はそのままに、一次変調方式やデータ転送ルールの工夫により周波数利用効率を高めている。cdmaOneから1x、EVDOのRev.0からRev.Aへの進化やW-CDMAからHSDPA/HSUPAへの進化がこれに相当する。既存の土管を若干手直しする手間はあるが、導入コストは比較的お手軽である。
具体的には、cdmaOneから1xの進化で導入されたWalshコードの組み合わせパターンの拡張、Rev.AやHSDPA/HSUPAで導入されたQAM系変調方式の拡張がある。また、再送回数を削ったり、「パケット」のサイズそのものを小さくしたり、複数ユーザーのデータを1つのパケットに押し込んだりして小サイズデータの収容効率を上げるなどの工夫が採用されている。
このほかにも、TD-CDMAで採用されているようなTDDの導入が挙げられる。面白いことに世間様のデータ通信は、無線区間においてはダウンロード方向のデータ量が多い。TDDの導入により、ダウンロード方向にリソースを重点配分することでも周波数利用効率を上げることが可能だ。
【3.新規格の「バイパス」を作る】
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この手法では、既存システムとの互換性を潔く切り捨てる代わりに、これまでとは段違いの通信速度を得ることができる。かつてのPDCからW-CDMAへの切り替わりや、HSDPAやEVDOを採用している事業者がLTEを導入するケースや、新たにWiMAXを採用するケースが当てはまる。知っての通り、切り替わり前後のシステムには互換性がない。
LTEやWiMAXでは、既に無線LAN等で導入されている「OFDM」を使っている。原理としては、CDMAの拡散符号系の代わりに基本となる周波数の「高調波」同士を掛け合わせる手法を使うなど、CDMAとは良く似た一面を持っているが、原理からして互換性はない。しかし、最大の通信速度は少なくとも1桁以上は上がる。