北陸新幹線を捻り出せ(前編)

冬場の富山~首都圏の往復は、ある意味天候との戦いでもあり、博打でもある。
空路は欠航折り返しが頻発、とまではいかないものの1割弱は引っかかるという統計がある。雪雲の中を突っ切るため、乗り心地は芳しくない。幸いにして一度も経験したことはないが、運良く羽田を飛び立っても天候の影響で着陸できずに羽田引き返しとなるどんでん返しも用意されている。加えて羽田へのアクセスと強化される一方の搭乗前手続きで、トータルな時間でのメリットが少なくなりつつある。飛んでいる時間は1時間弱と短くても、空港へのアクセスと手続き待ち諸々を含めると、最短でも空路は二時間近くかかってしまう。飛んでいる時間が時間だけにもったいない。


座席周りにスペースがあってトイレも食事も自由な列車の方が遙かにストレスは少ないが、困ったことに在来線は雪の影響を受けやすい。新幹線は比較的天候の影響を受けにくいようだが、造る造らないという話は障害が多々あるのかなかなか進んでいない。
北陸方面を空で行き来するお客の大半を列車にシフトさせ、空いた羽田の発着枠を、福岡なり新千歳なり沖縄なり、空路であることのメリットが出る地域向けに振り向けると少なくとも一石二鳥くらいにはなるのではなかろうか。
どうにかして北陸新幹線をひねり出せないものか、ということで以下のような取らぬ狸の皮算用をやってみた。本当ににそろばんを弾いてみるとなると桁数が多くなりすぎて特殊な訓練が必要になってしまいかねないので適当なところで止めておくとしよう。
さて、まずは造るにあたり解決が必要な課題とその対策を練っておかねばなるまい。
大まかには
1.建設費用・土地買収費用
2.東京駅のホーム増設
3.京都大阪方面との接続
4.名古屋方面との接続
あたりになるだろうか。建設の前提とされている並行在来線の経営も問題ではあるが、意外にもあっさりと金沢~直江津間はまとめて第3セクター化の方向でまとまってしまったようなので建設に支障なし、としておこう。
【1.建設費用・土地買収費用…の対策】
実際の所箱物を作ると、新幹線は高速道路の半分の表面積ながらもそれなりにお金がかかる。高速道路のように郊外を通すわけにもいかないので、土地代がある程度かかるのは致し方なし、となるだろう。節約できるところでしっかり節約しておかねばなるまい。
幸い北陸線の沿線には昔の線路跡が随分と残っている。上越~新潟富山県境までの親不知子不知や頸城の丘陵地帯だけでも、線路跡と思しき自転車道を何度となく見かけることができる。これが使えるのではなかろうか。同じような場所は敦賀~米原までの間にも結構残っている。北陸自動車道の上下線の間にトンネルだけが残っているのを拝むことができる。これを活用して工事費を浮かせられそうだ。
大まかには昔の線路跡を復活させて在来線を引っ越しさせて、空いた(元)在来線のトンネルなどを新幹線サイズに手直しする、という流れになる。新規で土地を買収して新幹線用の高架橋を造ったりトンネルを掘るよりも、改造の方が安く上がるとみているがどうだろうか。
駅付近も比較的土地の単価が高く買収費用が嵩むことが予想されるが、新幹線開業後、在来線に走るは特急列車よりも本数が少ない普通列車&貨物列車+α程度となることから、複線の片方を潰して単線にしてしまうというのはどうだろうか。後々の維持管理費用軽減も期待できそうだ。
単純に節約だけでは意味がないので、北陸新幹線の駅施設やホームは後回しにして先に線路だけ造ってしまい、北陸方面に止まる列車の運行開始よりも先に東京~大阪間のノンストップ列車を多数走らせるというのもありだろうか。一定期間東京~大阪間を移動するお客を北陸経由のノンストップ列車に誘導し、東海道新幹線には名古屋をはじめ、途中駅で乗り降りする方々に必要最低限の本数まで減らすことで、北陸新幹線の建設費用の償却と、東海道新幹線の騒音問題への対策や東海地震に備えた大がかりな補強工事、更なるスピードアップに向けた準備がやりやすくなるなど、一石二鳥にはなるだろうか。