永遠へのスリーパーホールド(松本・前編)

おめでたい出来事というのは重なるものなのか、挙式披露宴の招待状が届いた。
事前の電話で日程調整が済んでいることもあり、行く手を遮るもの、なし。
場所は松本。当地での学生生活は1年だけだったが、その後も何かと縁があって何度となく足を運ぶ土地だけに、会場の位置も大雑把な見当は付く。

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…この招待状、1年程前に似たようなものを見たような気がする。封筒のデザイン、挨拶状のスタイルはともかく、芳名帳代わりに受付カードが入っていることに加えて、カードのデザインまで…あれは長野の挙式だったろうか。


クスッと来たのは確かだが、ほっとしたのも確かだ。これで一段落…だろうか。
しかし、結婚式出席を翌日に控えたはよいが今年に入って以降夜更かし続きでいい加減体力の残量も限界に近づいてきたような予感。会場の信州へは日付が変わる直前の快速ムーンライトでの移動も時刻表上では可能となっている。が、到着後5時間で結婚式開始、というのは強行日程もいいところだ。祝福の心は健全な心身から。
もう1つ、この時期の信州は「カミ雪」の心配もある。忘れた頃の大雪で交通機関全断、では洒落になっていないので、慎重を期して前日に移動することとした。日頃の疲れからか車中で一眠りしてしまい、目が覚めた頃にはスーパーあずさは笹子を越えていた。八ヶ岳あたりだろうか。
翌朝、いつもの出勤と似たような時間に起床し、少々早いような気もする時刻に会場へ向かうと挙式が始まる前に既に受け付けテーブルが組まれており、既に受け付けは始まっていた。連れが受け付け役に指名されており少々焦ったが、親族分の受付を先に済ませておこうという意図で設けられたものらしい。写真を一枚撮って控え室へ通されたが親族の方々でかなりの混雑になっており、別の待合いスペースへ移動。親族が殆どの場所へ踏み込むのもどうだか。
待合いスペースで関係者と連絡を取っていると、どこからか聞き慣れた声がする…と思ったが、見慣れた姿はそこにはない。それが当の花嫁であることに気付いたのは、挙式が始まってからだった。学生時代はそのままヒッチハイクへ出かけそうな格好で出歩いていたが、ここ数年で少なくとも外見は一気に変わった。一昨年に「花嫁は化ける」と言う話を耳にしているが、あながち間違い、というよりは格言に近いものらしい。なんということでしょう、ではないが。
そろそろかな、という時刻を見計らって会場チャペル付近へ移動すると、まだ準備中だった。一旦引き返すと開始5分前きっかりの案内放送があり、移動。チャペルの方角からけたたましいトランペットの音がしており、道に迷う方はいなかったようだ。中に入ると、牧師寒そうに震えながら待っている。定刻通りに集まるわけがないが、それは織り込み済みかもしれない。
人の移動が一通り落ち着いた頃を見計らって扉が開き、親父さんと嫁さんが入場し、旦那さんとバトンタッチ。「タダイマヨリ ケッコンシキヲハジメマス」の片言の日本語っぽい宣言とともに挙式は始まった。
が…
事前説明で写真撮影は専属のカメラマン以外はご遠慮くださいとあったが、携帯電話やデジカメ、一眼レフで撮影している出席者の多いこと。シャッター音が四方八方で唸りを上げる。神前式であればこういうことはまず起こらない…と思われる。見たのは2例だけだが。
聖書朗読に続いて、賛美歌斉唱。この歳にしてチャペル式の挙式に顔を出すのは初めてだったが、カンペ本が用意されていたこともありどうにかこなす。同様な方々が他にもいるかどうかは定かでない。
そして挙式のヤマ場となる。意志確認の後に指輪交換をし、もう一回確認してから宣誓書に署名と定番の形式を取ってはいるが、実際はそんな薄っぺらいもんじゃあない。そのはず。
誓いのキスの後、挙式開始前からに点っていた2本の蝋燭から中央の蝋燭に点火し、両端の蝋燭は消火。かくして、牧師が結婚成立を宣言し、最初のヤマは越えた。
賛美歌のあと、お外でライスシャワーを投ましょう、と渡された物体を見て一瞬目を疑った。たわしの様に見える。改めてよく見ると、物体中心部のカプセルに米らしき物は入っていたが、大きさといい、形といい、材質といい、やはりたわしのように見える。後片付けと環境への配慮はぬかりなし。
ライスシャワー投げのあとは、できたてほやほやの夫婦を囲んでご歓談の方々 or ストーブにあたる方々にくっきりと分かれる。晴れ間がのぞいた分だけ、冷え込みは進む。嫁さんも予めコートを着装して式に臨む。会場の周りには、街灯のようなものが配置されていたが、実はストーブ。やっぱり、年寄りが集まる。
一段落したところでチャペルから本館に戻るが、いい加減披露宴30分前。連れに受付のお仕事が回ってきていたが、このタイミングに至ってもそれらしき情報は流れてこない。いい加減タイムアップが迫っていると判断して手分けして会場内で情報を集めに走りまわり、ギリギリセーフ。
披露宴会場と思しき場所の付近に受付がない…かと思えば、親族の方々が集まっていた控え室の入り口が披露宴の受付も兼ねており、ちょっとややこしい。多忙とはいえスタッフの手際もどうだか。一工夫の余地あり。準備は念入りに。