北都の叫び~霧の中の100万ドル(函館 前編)

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特急に揺られて函館駅に到着。そこから路面電車に揺られること30分少々で湯の川温泉に到着。畳の間と、レトロな外観のベッドルームがあり、外が見える檜風呂もある。贅沢な造り。ロッキングチェアーまである。加えて風呂上がりのドリンクチケットにマッサージのサービスまで付いてくるとは。
窓を開けると、その先は丁度空港の方向を向いており、部屋の中に離着陸の時刻を書いたカードがおいてある。荷物の整理もそこそこに時計を見るとそろそろ着陸の時刻。ということでデジカメを構えて待ちかまえていると、程なく頭上を轟音と共に青い翼が駆け抜け、目前の空港に舞い降りた。


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着陸を拝んだところで夕食の時間になったが、その最中にも轟音。飛び立ったか着陸したかは不明。
函館に来たなら100万ドルの夜景を是非とも拝まねば、ということで函館山行きの定期観光バスに乗る。付近の宿からの客を集めて、バスは都合5台くらいにまで増えた。狭い山道を他の観光バスと交互に通り抜けながら、途中2カ所程撮影ポイントを通過し頂上へ向かう。駐車場入り口で10分ほど待つと、乗降口が開く。これでも待ち時間としては少ない方に入るという話。自家用車を日没から夜10時半まで立ち入り禁止にしても、混雑が激しいという。ならば時間をずらせば…ともいかない。夜10時半になると市街地の灯りを一斉に落とすよう申し合わせてある。
…乗客を降ろした後、バスが走り去って行くではないか…って、それは頂上の駐車場待ちによる混雑を緩和すべく考え出された「回転方式」というバス運行ルール。頂上までお客を運んだバスはそのまま一旦山を下り、また上がってお客を迎えにいく、という仕掛けだ。山にいられるのはバスが戻ってくるまでの約1時間程だが、夜景を拝むには十分。バスガイドから集合場所と時刻の案内があり、一旦散開。
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…山頂は黒山の人だかりの中に、所々写真撮影業者の脚立が伸びている、異様な光景。身動きは取れたが、あまりの人の多さに、鉄骨造りの階段が心なしか揺れているような気がする。人の動きの隙間を縫って、シャッターを押す。数枚ほど失敗作を経て、ようやくデジカメの夜景撮影モードの使い方を覚える。説明書はもとよりない。
街の灯りに加えて、所々海上にも灯りが散らばっている。灯りの主はイカ釣り漁船だが、イカ釣りの本番は丑三つ時。灯りを付けているのは観光サービス。
行きのバスの中で「霧のため夜景が拝めないこともある」という案内があったが、杞憂に終わったようだ。いい眺めだ…と思いきや、海からの霧が登ってきて周囲を覆う。この時期の函館山はよく霧に包まれる。何かが出てきそうな予感がしたが、その中から出てきたのは山頂目指して登ってきたロープウェイだった。
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しかし、最後の最後で霧が晴れ、100万ドルと評される夜景を拝むことができた。めでたしめでたし。
一通り撮影が終わったところで、時計を見ると5分前。近くから一度聞いたような声がする。バスガイドの声。同じ定期観光バスに乗っているだけの、宿も集まりもてんでばらばらの集団だったが、定刻通り集合。時間通りに集まらなかった場合は置いてけぼり、という案内が効いたのかは定かではない。…実際に置いてけぼり、というのはあるのだろうか。「回転方式」のルールに沿って運行時刻が決まっているだけに、無いとは言い切れない。
この時期、函館山に登るのは大博打だったらしい。前日は終日霧に覆われており、バスは出たものの終ぞ夜景を拝めずじまいという話。
お奨めは秋以降。
…どうでもいいが、定期観光バスのバスガイドの喋りっぷりがどことなく中島みゆきを連想させる。声のトーンも。
宿に戻って風呂に浸かる…の前に、足マッサージのおまけ付き。マッサージの兄さんと今回の旅程の話をしていたのだが、かの「ぱんちょう」はかなり有名な店だという。ただものじゃぁない。あの店の豚丼は。
私の足は割と固い足らしい。よいのかよくないのかは定かではない。結構強い力をかけたというが、痛くはなかった。しかし、血行がよくなったのか、その後暫く足の裏が温かくなったような感触がしたのは確かだ。
足をほぐした後に、お風呂に浸かる…が、どことなく塩素の香りがする…単に目聡いだけか。お役所の指導で旅情も台無し。加熱、加圧等々、殺菌法はいくらでもあるのだが…
風呂上がりに無料チケットで軽く飲み、部屋に戻る。障子戸を開けると、滑走路の灯りがまだ点いている。部屋の航空時刻表によると、最終便の時刻は既に過ぎている。翼よ、あれが函館の灯だ…なんてことはないか。
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少なくとも日付が変わって床につく時間までは、滑走路の灯りはついていた。いつまで点けていたのだろうか。