北斗の叫び~未踏の地へ(往路 後編)

未踏の地、北海道へ向けて陸路出発。暫く通勤客の視線を浴びつつ、列車は順調に大宮を通過。
程なく、少々早いめの夕食の時間になる。食堂車でお食事なんて生まれて初めて。少々緊張しますね?
物心がつくかつかないかの頃、列車には食堂車がついていたなぁと記憶しているが、お目にかかるどころか、ニュースなどで廃止の話しか聞かない。
ここ数年で長距離列車の利用機会は格段に増えたが、車内販売か、車内の売店か、せいぜいでごく一部の列車のラウンジみたいな所か、その位だ。


それだけに食堂車という存在には物珍しさを感じる。
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入り口で予約チケットを渡すと、車両の端の予約席へご案内。1カ所だけ、椅子ではなく、固定式の腰掛けになっている席だ。少々揺れが気になるが、車両の端が揺れるのは食堂車に限ったことではない。まあ、アルコールがこぼれない程度なら…ってまた飲む気か。
懐石御膳ということで冷酒を…とも考えたが、飲めるのが自分だけとなってしまうこともあり、白ワインをつける。
ゆっくりと懐石御膳を食す…つもりが、食堂中央に陣取るキャンプ気分の騒がしい馬鹿親子で室内の雰囲気ぶち壊し。やれやれ。
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対して、それらしくまとめた服装で静かに冷酒を酌み交わす斜め向かいの老夫婦、ああいう年の取り方をしたいものだ…ってそれは何年先の話やら。
少々早めながらも小一時間の夕食はかなりの記念になるのか、デジカメのシャッター音が所々聞こえる。これはありなのかと思ったが、係員が記念撮影を勧めてくる位。あり、ということにしておこう。普通のホテルとは少々ノリが違う。
3部入れ替え制の食堂車はこのあとも予約満席。予約を取るのも楽ではない。まあ、こちらも予約は必要だが特製ケータリング弁当でも贅沢気分が味わえたという話。次はそれにしてみるのもいいだろう。機会があればの話だが。
夕食が終わる頃にはすっかり日が落ちている。いつの間にか小山を通過していたようだ。
車内販売の接近を告げるランプが点灯。程なく車内販売の声する。
飲食物以外に特製ストラップとか、特製目覚ましに絵はがきだとか、記念品としていろいろと取り揃えてはあるが、カシオペアのロゴが入ったアメニティーグッズ一式だけでも十分記念になるとかで。
季節はずれの長い夜。コーヒーと「大人の休日」ビール片手に札幌到着後にむけて、ガイド本、カンペ片手に作戦会議に入る。大雑把に決めておいた計画の詳細を詰めにかかる。しかし、これまでの経験からすると私が出かける旅行は「いきあたりばっ旅」。
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ある程度酔いもさめたろうかというところでシャワーを浴びる。
今回以前にも寝台列車は何度か利用したことがあるが、シャワーの利用は初めて。予約制の共同シャワーはどういうわけだか、いつも予約で一杯なのだ。深夜だろうが関係なし。
今回はシャワールーム付きの部屋なのでその辺は気兼ねなく使え…なかった。
お湯の量には限度があり、それなりに気を遣う必要がある。中にはボタン式の栓と残り時間表示。お湯を使うたびに残り時間表示が減っていく。
ボタンのおかげで比較的簡単にお湯を出したり止めたりできるため、適当に使っていても思ったより消費量は少なくて済んだ。汗を流す程度であれば、3分相当のお湯があれば十分らしい。朝もう1回浴びてもおつりが来る。
そういえば、予約制の共同シャワールームは、どうやって大量のお湯を賄っているのだろうか。少々気にはなる。
車中のテレビをつけると、衛星放送や文字放送やビデオ放映が用意されていたが、カーナビらしき画面で現在位置を表示するチャンネルもあった。
頭の中では北へ向かっているのはわかっているが、カーナビの画面の見方で少々混乱。普通、地図の類は北、もしくは進行方向が上になっているはずだが、上下南北進行方向が時折入れ替わって表示されているように見える瞬間があった。
カーナビの方位磁針マークは、紅白どちらが北を指すのが普通なのだろう?
その頃車内放送は仙台到着を告げていた。とっくに未踏の地。
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3部予約入れ替え制の夕食のあと、短いパブタイムとなる。どれどれ、メニューは…と見てみると、予約がなくてもそれなりに食事もできるようになっている。予約、限定といったキーワードが並ぶこの列車にあって、食事を逃すなんてそれはまずいでしょう…?
ここでもまた飲む。
部屋に戻ると、丁度盛岡を出たところだった。これより先は駄洒落じゃあないが銀河鉄道。
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北の大地はまだまだ遠い。その入り口の青函トンネルをくぐるのは数時間先の丑三つ時の話。さすがにそこまで起きていると翌朝に差し支えそうだ…ていうか、しこたまアルコールがはいったためか眠気が…。

目が覚めると、列車は函館を出て紋別のあたりを走っている。外は生憎の雨模様。
札幌到着後すぐに大倉山のジャンプ台を往復する予定でいるが、どうしたものか。
そこへモーニングコーヒーと新聞が届けられる。函館で積み込んだのか、地元紙だ。
道内各地の大まかな予報を見ると、時間帯が遅くなるほど雨が降りやすくなる傾向。
所により、横殴りの雨マーク。即ち強い雨。道内は広いとはいえ、少々心配になってきた。
コーヒーを飲みながら、一息つくとしよう。
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程なく車内放送で朝食の営業開始が案内された。
どれどれということ食堂車へ向かうと、既に長蛇の列。少々出遅れてしまって朝食にありつくまでに随分待ってしまった。客層が客層なのか、和食が瞬時に品切れとなる。洋食の方は、通路からも見えるくらいの材料が積まれていたので食べられない、ということはなさそうだが。
途中で断念する方々も現れて順番が繰り上がり、30分程待ったところで朝食にありつくことができた。結構なボリュームだったが、事前予約やケータリングの活用でどうにかならないものか。
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朝食を終えるまでの間に結構な距離を走っていたらしく、雨降りの地域は既に抜けていたようだ。北海道は意外と広いかもしれない。
終点札幌につく頃には空は曇り空になっていた。さして暗い雲ではない。とりあえず今日明日ともってくれればよいが。
そういえばということで最後にシャワーのお湯の残量を見てみた。回復した様子がないところをみると、夜間にお湯を沸かしている…ということではなさそうだ。さすがに個室のお湯は保温だけで精一杯なのかもしれない。