アダプティブアレイアンテナ

一部のPHS基地局で、「アダプティブアレイアンテナ」を搭載したものが登場している。何者なのか?
これは、ダイバーシティ技術を発展させた物だが、ダイバーシティ技術とは、 「複数の異なった受信条件を用意し(複数のアンテナを用意したりとか) 」「それぞれの条件で同一の信号を受信して」「最もよく受信された信号を通信に使う(ふつうは信号の最も強いものを選ぶ)」というものになる(復習)。
この手法は、設定する受信条件によって(電波の偏波面・受信する位置・周波数帯など)数種に分類されているが、受信した信号の「選択方法」によっても分類できる。主な物では最も振幅が大きいなどの条件で、最もよい信号だけを選択する「切換ダイバーシティ」(通常「ダイバーシティ」というとこれを指す)、復調してから条件のよい信号だけを選択する「検波後切換ダイバーシティ」、複数の信号を適当な「重み」をつけて合成する「最大比合成ダイバーシティ」がある。この中の「最大比合成ダイバーシティ」が「アダプティブアレイアンテナ」のもとになっている。


アダプティブアレイアンテナは、アンテナと可変減衰器・可変移相器(信号の位相をずらす回路)が複数集まってできている。このアンテナは、複数の部分アンテナで受信した電波に対して減衰器で振幅を移相器で位相を適宜調整し、合成する前にそれぞれの信号の位相・波形のずれをなくし、干渉しないようにする。アナログ版レイク受信機といったところである。
減衰器・移相器の働き具合は自在に変化させられるので、アンテナそのものを動かさずに指向性(電波を最もよく受信できる方向)および指向性の「Null点(電波が届いていてもアンテナでは全く受信しない方向)」を変えることができる。また、一定の範囲内ならば、受信した際の信号の時間差もカバーできる。
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フェージングそのものをうち消すことができるアダプティブアレイアンテナは、「フラットフェージング」「周波数選択性フェージング」どちらに対してもその効果は大きい。
携帯電話などの移動体通信では、アンテナそのものを動かすことがむずかしいため、アダプティブアレイアンテナが有効となる・・・・・のだが、このアダプティブアレイアンテナが実際に力を発揮するには大きなアンテナスペースが必要となる。
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PHS基地局のイメージになるが、上部に4本立っているのが受信用のアンテナ、真下の箱が、受信信号を調整、合成する装置の部分となる。