適応自動等化

[image]
フェージング対策には、「ダイバーシティ受信」「アダプティブアレイアンテナ」を使う方法があるが、いずれも複数のアンテナが必要になる。アンテナが1本しかない場合、どうするか?
マルチパスが生じている場合、パルスを1つ送ると、受信アンテナには複数のパルスが時間差をおいて入ってくる。フェージングフィルター(仮称)にパルスを1つ送ると、複数のパルスが出力される・・・と考えることができる。


ならば、全く逆の応答をする「逆フェージングフィルター(仮称)」を使って、元の信号をとりだそうというのが「適応自動等化」の考え方である。この方法はGSM方式の通信システムで実際に用いられている。
[image]
逆フェージングフィルターは、フェージングの特性をうち消すように設定される。が、フェージングの特性は刻々と変わるので、可変タップ付き遅延線 (タップごとの減衰量を変化させることが可能)を使ったトランスバーサルフィルタを使うか、あるいは同様のことを行う信号処理回路を用意して、適切な逆フェージングフィルター特性を作り出す。
問題のフィルタ特性を求める方法は、大きく2つある。一つは「判定帰還」と呼ばれ、復調後の信号から逆算した信号と実際に受信した信号を比較してフィルター特性を割り出す。もう1つは、一定時間毎に予め決めておいた信号を「トレーニングシークエンス」として送る方法で、その受信状況からフィルタ特性を割り出す。
このうち、判定帰還方式はフェージングが比較的軽い場合に、トレーニングシークエンスを使う方式は重いフェージングの場合によく用いられている。で、この適応自動等化は
フラットフェージングに弱い(フェージングフィルターの谷に入るとノイズの割合が多くなり、振幅だけ補正しても意味がない)、信号処理が複雑になりやすく高速化しづらいという欠点はあるが、使用する受信用アンテナは1本のみ、実際の処理はデジタル信号処理のみ(手軽)、周波数選択性フェージングに有効という利点もある。
[image]