電力制御

近距離からの信号が、遠距離からの弱い信号をかき消す事がある「遠近問題」。これを解決するには、送信電力制御で端末の信号を一番強い信号を発する端末の出力を必要最低限にまで絞るのが一番である。
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送信電力の制御は大まかに2通りある。一つは送信側と受信側が連携して電力を調節する「クローズドループ」。もう一つは送信側のみで操作する「オープンループ」。


W-CDMAおよびcdma2000 1x/EVDOでは上下共にクローズドループ、cdmaOneでは下り線(基地局→端末)でオープンループ、上り線(端末→基地局)でクローズドループを使っている。
【クローズドループの場合】
1. 受信した信号の強さをみる
2. 結果を基に相手へ送信電力の調節を指示する
2-a. 基準より強い場合は出力を下げる指示を出す
2-b. 基準より弱い場合は出力を上げる指示を出す
3. 送信側で指示に応じた送信電力に合わせる
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【オープンループの場合】
1. 受信した信号の強さをみる
2. 結果から相手の置かれている電波状況を予測
2-a. 自分の送信電力を調節する
電力制御を繰り返すことによって基地局に届く電波は常に一定の範囲の強さになり、遠近問題の影響は軽減される。調節の間隔は、 cdmaOne/1x/EVDOでは毎秒800回、W-CDMAでは毎秒1600回行われている。受信電力の測定には、応答速度を早くするためと、単純に受信電力が解ればよいということもあり逆拡散前の信号を使うことが多い。
この電力制御だが、セルの境界付近にある端末がかかわっている際には少々気をつけないといけない。この辺にある端末は「ソフトハンドオーバー」で複数の基地局と交信していることがあるからだ。端末の送信アンテナには、殆どの場合指向性はない。端末から出た電波は四方八方に飛ぶため遠方の基地局から「出力を上げる」指示が出ると、より近いところにある基地局に大きな干渉を与えかねない。複数の基地局での受信電力を調べ、最も強い信号を受信した基地局に端末の相手をさせるなど、結構気を使う必要がある。
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