ソフトハンドオーバー

基地局や端末から出ている電波の届く範囲には限度がある。そこで通常では端末の位置を把握して最寄りの基地局へ繋ぎ直す「ハンドオーバー」を随時行っているが、その中にCDMA方式ならでは、というか相性のいい方法がある。「ソフトハンドオーバー」である。
大まかな手順は次のようになる。
1.携帯端末は、基地局・制御局との間で常に位置情報の交換を行う。
2.あらかじめ、通話エリアを基地局の電波が届く範囲を元に「セル」と呼ばれる区画に区切っておく。


3.端末がセルの端にきて、電波が届きにくくなっていることを検知する。
4.制御局が、次の基地局を探す。
ここまでは通常のハンドオーバーと同じ。ここからがソフトハンドオーバー独自の手順となる。
5.元の基地局との交信と併行して次の基地局との交信を始める。
6.2つの基地局からの電波の時間差を「レイク受信機」などでカバーしつつ、担当する基地局を切り替える。
7.元の基地局との交信を打ち切る。
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ソフトハンドオーバーの最中、電波の飛び方は上のイメージのようになる。
ソフトハンドオーバーを行う際、端末に「複数の基地局と同時に交信できる」機能を持たせなければならない。現在広く使われているTDMA・FDMA方式の場合、電波の干渉の影響を避けるため、隣あったセルの間では異なる周波数を使用する。このため、1台の端末の中に受信装置が複数必要になるのだが、コストがかかるため殆ど行われていない。
一方、CDMA方式の場合は、「レイク受信機」を使うことにより簡単にソフトハンドオーバーを実現できる。拡散パターンさえ異なっていれば、同じ周波数帯の電波を使っていても干渉の影響は少ない上に、レイク受信機は1組あれば済む。
ところで、利用できる周波数帯は大抵の場合複数用意されている。移動先で同じ周波数帯が混み合っているなどの理由で使えないこともあるが、その場合はどうなるか?
この場合は通常のハンドオーバー同様、周波数帯を切り替える。レイク受信では「同じ周波数帯にある複数の拡散パターン」しかカバーできないため、ソフトハンドオーバーは行われない。技術の筋では周波数帯を切り替える従来型のハンドオーバーを「ハードハンドオーバー」「ハンドダウン」などと呼んで区別することもあるという。