回線容量と通話品質

CDMA方式の移動体通信システムには、従来型TDMA/FDMA方式では問題にならなかったものが問題になったり、あるいは考え方が全く異なるものがあったりする。回線の考え方もその1つである。
従来のTDMA/FDMA方式では回線容量は物理的な周波数、タイムスロットの位置などで明確に定めることができ、回線容量を上回る需要があった場合…非常に多数の人が同時に電話をかけ始めた場合などは利用できないことがある。専門的には「呼損が発生している」と呼んでいる。


事故や大雨の際、画面に「混み合っています」などと出ることがあるが、そのときは「回線」が埋まっていると考えて良い(電話会社ではこのような状態になる一歩手前で「発信規制」を行っているという)。また、限度内であれば利用者の数によって通話品質が変化することは滅多にない。
一方CDMA方式ではそうはいかない。通話品質も考慮に入れないと回線容量を定めることができない。CDMA方式では、所定の通話品質(データの伝送帯域幅)を確保できるチャンネルのことを回線と呼んでいる。
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1枚の紙(全体の回線容量)をその時々の利用者で同じ太さの帯(一人一人の回線)に切り分け、その太さが一定以上ならば回線としてカウントされ、それに満たない場合は呼損とする。そのような考え方で「利用者が必ず所定の通話品質を確保できる」最大の回線数を求めると、それがCDMA方式の回線容量となる。 TDMA/FDMA方式では帯の太さが物理的な周波数、タイムスロットの位置など予め決まっているため、帯をもらえる人の数も予め決まっている。
ということで、利用者が多くなって、全員が受け取る帯の太さが所定より細くなったら全員呼損(利用できない)となるかというと、そうでもない。 CDMA方式では計算上の回線容量を上回る利用者がいた場合でも、オーバーした分がわずかであれば実際にはそこそこ利用できる。先ほどの紙でたとえると、利用者の間で切り分けた帯の太さが「所定の太さよりも少し細い」状態になる。つまり少々通話品質が落ちるものの、利用できないことはないということである。もっとも、基地局から先の有線の部分や、交換機が混み合っていたのでは意味がないのだが。
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