編集長が走る(4) ~1997年6月:兆候~

もう6月。冊子を書いて刷って出してのサイクルも3周目に入った。新人スタッフも加わって余裕も少し生まれ、仕事も傍目には板に付いてきたように見えた・・・のだがそうは問屋が秋葉原。
例年この時期になると教育学部の3年生には教育実習が待っている。当然編集スタッフとて該当者は例外なく実習に(一部泊まり込みで)専念しないといかんので実習中は戦線離脱となる。昔はスタッフの1/3が抜けたり、編集長不在となったこともあったとか。


この年は幸いにして実習による戦線離脱者は1名にとどまり、加えて新人スタッフの中から「こんなことをやってみたい」という風に自分の持ちネタを出してくる奴も現れ、十分カバーできそうな雰囲気である。おまけに編集ルームの隣にある生協事務所を経由して「中米ヒッチハイク旅行記を投稿したい」という話がやってきた。う~ん、いい感ぢ。そーいや、このころ猿岩石(だったよなぁ)がヒッチハイクをしていたのが話題になってたな。
ついでにこの号から食生活をテーマにした連載も始まり、その先の冊子の方向性が見えてきたような気配。「学内のお店の情報や健康など、生活に役に立ちそうなネタをメインに据える」というのがそれである。
これが定まるまでにはちょっとした前置きがありましてなぁ。
編集長の仕事をする前は、制作現場とは全く縁のない普通の読者としてその冊子を1年間読んでたんだけど、その中に1つだけどうしても読む気にならん嫌いな号が1つだけあったんですわ。
具体的には、読みたかった連載記事をじぇ~んぶお休みにして平和運動ネタ20ページ連続でのっけたという代物。大好きだったお料理コーナーもお休みとなり、お預けを喰らった犬の気分でした。はい。斜め読みでも読むの疲れた。て~か、予告がなかったということもあって、かなりびっくりした。(以前信州大学の新聞部がオウムに感化され、入学式でオウムの広報をばらまいていたことを知っている人はどのくらいいるかな?)
平和運動やってるとこっつ~と、典型的なところでは共○党だとか○青同盟や中○派、過激派の類くらいだろうと思っている人がかなり多い・・・というのは大げさなのかどうかは知らないが、読みたかったコーナーが一斉になくなってしまった事やネタそのものに対する不満の声が結構あったような記憶がある。冊子の中身を肴にして話をすることも結構あった周囲の意見も結構似たようなもんだった。この影響か、編集長の仕事を始めた当初からその手のネタは「禁じ手」にしていた。
あ、そうそう。当時私が編集長をやっていた冊子は、正確に言うと『人々の生活と平和のため』に活動している大学生協の『機関誌』なんですわ。本来は平和ネタは必須らしいんだけど、専務(生協の御頭)とかけあった末に
「生活に役に立つ情報を前面に出し、政治色の強いネタは最小限に抑える」
なる方針が固まったんですわ。
ということもあって、この号で戦争の証人ともいうべき「松代大本営」の見学会報告を載っける事になった際には、執筆担当にその方針をじっくりと伝えておいた上に、原稿にもかなりの赤ペンを入れた。後にも先にも、原稿の半分以上にも渡る大幅な修正を加えたのはこれだけである。本当は編集長権限で原稿を没にしてしまいたかったのだが、生協には活動報告の義務があるらしいとのことでこうなった。だが、それ以降編集スタッフの間では「平和」というと「ぴんふ(麻雀の役)」というのが完全に定着し、「平和運動」ネタを扱ったページは登場していない。
とまあ、毎月ガチンコの連続ながらもゆっくりと進んでいったかに見えたんだが・・・とんでもないことがおこった。非常にいいタイミングで一部編集スタッフの間で内紛が起こったのである。原因はガキの痴話ゲンカ級のしょうもないこと(?)で、野郎同士ならば殴り合いの後に友情が芽生えたかもしれんのだがこの場合はそうでもなかった。結局内紛の直後に2人抜け。しかも置き手紙付き。
当時の当事者共に言いたかったことがある。編集と試験と寮の役員の仕事ででいっぱいっぱいだったこともあってお蔵入りになっていたが、今こそ(別に今でなくてもいいかもしれんが)封印を解く。
ちゅこちはちぇいちょうちたでちゅかぁ~?
おふざけはこの辺にしておくか。
さて、内紛のどこがタイミングよかったのか?
まず1つは、抜けていった約2名がきっちり自分たちの原稿(8ページ)を仕上げてから抜けていったこと。もう1つは抜けていった時期が夏休み直前だったことである。次の号の制作にはいるまでには1ヶ月少々間が空くことになるのだ。ひょっとしたら妙案が浮かぶかもしれない??
とはいえこの時期に一度に2人も抜けるのはか~なり痛い。次の号は
・教育実習で1人
・内紛で2人
・就職活動&大学院入試で3人
抜けた状態で制作に当たることになりそげ。制作スタッフは実質半減。はっきり言って非常にやばい。
でも、これまでの中に今後の「勝利の鍵」ともいえる大きなものが隠れていることに気付いている者は、まだ制作スタッフの中にはいなかった。
豆データファイル
冊子の名称:月刊まほろば7/8月合併号
冊子の総ページ数:42P
目玉記事:野菜の保存期間
自分で担当したページ:9P
発行日:July,01/1997
発行部数:1000
Rec/Mix:2000-09-28