太陽の裏の裏の流星

うさぎは思った。「あぁー、あの島へ行きてぇー。」
と、そこへ頭のよくなさそーなワニの御一行様登場。そこでうさぎは自らを神の使ひと称し、ワニに乗ってまんまと海へ渡る。そして無事帰還を果たす…….と思いきや、正体ばれて怒ったワニ達に自慢のサラサラヘアーを残らず抜かれてしまう。
うさぎ、シークシクシクシクシク…….となっていたところ、通りがかりの神様に助けられ、ガマの穂でなでてもらってうさぎは無事に元のサラサラヘアーにもどったのでちた。めでたし、めでたし。


これ、御存知「因幡の白うさぎ」ネ。昔話の中には例え話が多いから、このオハナシもウサギの毛の伸びの速さの例え話だったりするのかなぁ……..。
閑話休題、世の中に美しいもの、価値のあるものは多々あれど、悲しいかな流星のごとく消えてゆきつつあるものもある。一度消えると最後、なかなか白うさぎのサラサラヘアーのようにはいかない。
「タイマイ」だとか「ベッ甲」なんて聞いたことはないだろーか?\ 中でも「ベッ甲の櫛」にはお目にかかった方々もいるかも知れない。
このテの「ベッ甲細工」は次のよおにしてつくるそおだ。
材料は海亀の一種にあたるタイマイガメ。その甲羅の表面にある「うろこ」をとってこれを板にする。
この板を何枚か貼り合わせて、大まかな形をつくる。タイマイガメの甲羅ってぇのは温めると柔らかくなって、加工しやすくなる。そこを曲げたり彫ったりしていくうちに、亀の甲羅が見事な芸術作品に昇華する。
この「ベッ甲細工」、3年ほど前にタイマイガメの捕獲が禁止されたこともあって、希少価値が高くなってきている。タイマイベッ甲は、タイマイガメの命と引き替えにして得られる代物なのだ。
代用品として、水牛などからとったベッ甲も最近登場しているが、タイマイベッ甲の質にはかなわないらしい。特に尻尾に一番近い所からとれたものは、透明度が高い。とりあえず、ストックの方はあることはあるのだが…….
「美人薄命」とはよくいうが、タイマイベッ甲もいずれは消えてしまうのか……無念。などと思っていたところ、最近もんのすごいことが明らかになった。「生きたまま」のタイマイガメからベッ甲を取れるというのだ。
ベッ甲を取った後の亀の甲羅だが、さすがに「因幡の白うさぎ」のように元には戻らないが、今度は一枚板のような甲羅ができるという。おぉーっ、なんてぇ生命力なんだ。
まさに「捨てる神あれば拾う神あり」。亀を殺さずしてベッ甲がとれるというから、ベッ甲細工にも再興のチャンスは十分にある。これで編集長もお孫さんにベッ甲のペンダントをプレゼントできるかもしれなひ(笑)。
ところで、このベッ甲の話し、編集長も自ら執筆しているコラム「流星白書」で以前取りあげていたのを読者の皆さんは覚えているだろうか?
編集長がこれを読む時、はたしてどんな顔をされるのだろうか?
編集長、炎メラメラ…….ということも、なきにしもあらず。それを承知でこんなことを書いている私も私だが。
Rec:1997-1-27 Mix:1997-4-5